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主語が大きいとなぜ議論が燃え上がるのか | SNSに蔓延る存在しない矛盾

こんにちは、文通アプリ「レイター」の開発者です。

SNS(主にX)では日々、様々な事に対して賛成派と反対派がお互いに相手を批判、否定しあって燃え上がっている議論を見かけますよね。
例えば「年金問題と高齢者の貯蓄」「女性の自立」についてなど、リプライとリポストによる議論の応酬を目にした事がある人も多いのではないでしょうか?

もう少し具体な例を挙げてみると、
「女性は自立するべき、男性との扱いの差をつくるべきではない、女性らしさを強要すべきではない」
といった意見と
「弱者である女性は配慮配慮されるべき、女性らしさを認めるべき」
という意見がぶつかりあい、議論が燃え上がっているような様子を見た事はありませんか?

こういった議論が燃え上がりやすいのは、主語が大きい事によって生まれる「存在しない矛盾」が原因の一つであると考えています。
このコラムでは、なぜそのような議論が燃えあがりやすいのか、「主語が大きい」という観点から私の意見を述べてみようと思います。

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主語が大きいとは

主語が大きいとは、本来は「自分は〜」という主張をすべき時に、「男性は〜」とか「日本人は〜」のような大きな集団の主張のように論じる表現方法を指す言葉です。

例えば
「 私は今の内閣を支持していない」
という主張を
「日本人は今の内閣を支持していない」
と主語を入れ替える事で、あたかも日本人の総意として今の内閣を支持していないかのように見せかける表現手法です。

こういった表現方法に対する指摘として「それは主語が大きいよね」というように使われる事があります。

「私→我々」というように一人称の主語を大きくするだけでなく、三人称を大きくする表現方法もあります。

例えば
「私の友人の女性はレディファーストを強要してくる」
という表現を
「女性はレディファーストを強要してくる」
というように言い換える表現についても、「主語が大きい」と言えます。

ちなみに、「主語が大きい」という言葉の語源は古く、2010年くらいからインターネット上でも使われるようになりました。
Google検索でヒットする「主語が大きい」について言及している最古の記事は2010年8月8日のものです。

確かに「大きい主語は信頼できない」けど、それ自体の主語が大きい。(2010/08/08))

その2週間後にも「主語が大きい」について述べている記事が公開されています。

「主語が大きい」問題(20010/08/23)

三人称の主語が大きいと議論が燃え上がりやすい

では、なぜ主語が大きいと議論が燃え上がりやすいのでしょうか?

燃え上がりやすい議論の元となる主張の特徴として、三人称の主語を大きくしがちという特徴があると感じます。
以下、それに関連してなぜ主語が大きいと議論が燃え上がりやすいのかを説明してみます。

存在しない敵を作り出せるから

三人称の主語を大きくすると、存在しない敵を作り出す事ができます。

先に述べた
「私の友人の女性はレディファーストを強要してくる」
という例で考えてみましょう。

本来は、その主張をしている人の友人にたまたまレディファーストを強要してくる女性がいただけです。
しかし、
「女性はレディファーストを強要してくる」
と主語を大きくする事で、「レディファーストを強要してくる女性達」という存在しない敵を作り出す事できます。
実際に存在しているのは、主張している本人の友人の一人だけにも関わらずです。

存在しない敵をつくりだすことによって、自分の意見を通しやすくする、同調意見を引き出しやすくするという効果があります。
「誰かの友達の話」では興味を持たれずらくとも、「女性全体の話」に拡大する事で同じような体験をした人から興味を持たれやすくなるためです。
これによって、みんなで共通の敵を叩くという構図を作り出す事ができます。

これが、三人称の主語を大きくすると燃え上がりやすくなる一つ目の理由です。

存在しない矛盾を作り出せるから

三人称の主語を大きくすると、存在しない敵を作り出す事ができるだけでなく、その敵の中に存在しない矛盾を作り出す事もできるので、より攻撃しやすくすることができます。

先ほどの例を発展させると、このような主張をすることができます。
「女性は女性の自立を主張する一方でレディファーストも求めてくる。本当に自立したいなら、レディファーストなど求めずに男性と同等に扱われるべきだろう」

この主張を文面のまま受け取ると

  • 女性も自立したいという主張
  • 女性らしい配慮をしてほしいという主張

の両方を女性が内包しており、一見矛盾したダブルスタンダードのように見えます。

しかし、冷静に考えてみれば「自立を主張している女性」と「レディファーストを求める女性」は別の人間であり、個人単位で見れば矛盾はしていません。
それを意図的か、無自覚にか「女性」という大きな主語を使うことで、女性という集団に対して存在しない矛盾を作り出すことができるのです。

他にも
「低賃金を嘆くくせに、努力してこなかった若者」
「国から厚い支援を受けていながら預金を持て余す高齢者」
のような存在しない矛盾を作り出すことできます。

矛盾があることを人は嫌うので、多くの批判的、否定的な意見を集めやすくなります。
これが三人称の主語を大きくすると燃え上がりやすくなる二つ目の理由です。

まとめ

以上が、主語が大きいとなぜ議論が燃え上がるのかについての私なりの考えでした。
一言にまとめると、「主語を大きくする事で矛盾のある存在しない敵を作り出せるから」というのが議論が燃えやすくなり原因の一つだと思っています。

SNS上で議論が燃え上がる理由には、他にもステレオタイプ(偏見)、対立構造煽り、過度な自己責任論などもあると思いますが、今後SNS上で燃え上がっている議論を見かけたら「主語が大きくないか?」という視点で観察をしてみてると面白いかもしれません。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

なつ

文通アプリ「レイター」の開発と運営。普段はITエンジニアや会社経営をしています。SNSやそれを取り巻く文化が好きで、メジャーなSNSからマイナーなSNSまで様々なアプリを自分で使って試しています。

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